大川医院耳鼻咽喉科 施設のご案内
 ■耳垢について

耳は外側から外耳、中耳、内耳に分かれていて外耳道は外側1/3の軟骨部外耳道と内側2/3の骨部外耳道から成っています。耳垢は疾患というより軟骨部外耳道皮膚にある皮脂腺と、深部にある汗腺即ち汗の分泌腺の一種である耳垢腺からの脂肪性分泌物が、剥離脱落した上皮や角化物とともに作るむしろ生理的産物です。
これらの分泌物の割合によってかさかさに乾燥した人から、べたべたの軟性耳垢の人まで様々です。

よく子供さんの耳を掃除していて軟性耳垢を耳だれと勘違いして耳鼻科を受診さ れる方や、べたべたの耳垢を病気と勘違いされている方がみえますが、耳垢は病気ではありません。
それでは、耳垢はそのまま放っておけば良いのかというとそうではありません。耳垢は掃除をしないとやがて硬く固まってしまうからです。
これを耳垢栓塞といいますが、こういう状態の時に耳の中に風呂の水やプールの水が入ると、固まった耳垢がふやけて外耳道を完全に塞いでしまい耳が聞こえにくくなってしまいます。
耳の掃除には清潔な綿棒を用いて掃除をするのが最も安全且つ清潔と考えられます。ただし、軟性耳垢の人などでは、自分ではきれいに掃除できているつもりでも実際には耳垢を奥へ追いやってしまって、結局耳垢栓塞を起こしてしまうケースも見受 けられます。
爪、マッチ棒、ツマヨウジなどで掃除をするというのは、耳に傷をつけてしまうだけではなく衛生面を考えても決して行なわないほうが良いでしょう。
耳掻きも他人との共有は衛生的ではありませんし、強く乱暴に操作すると外耳道を傷つける原因となります。耳垢がうまく除去できない時には無理をせず、お近くの耳鼻科を 受診して下さい。

 ■耳掻きによる障害

耳掻きによる損傷ではどのような障害が起こりうるのでしょうか。最も多いのは耳掻きによる外耳道の傷、即ち外耳炎です。
軽度の発赤にとどまるものから、表皮の剥脱がおこり耳漏の分泌の見られるもの、あるいは外耳道が完全に腫れてしまって鼓膜の確認のできないものまで様々です。
適切な治療が行われた場合には比較的短時間で治癒することが多いのですが、耳の中を触るのがクセになってしまい、痛いにも拘わらず耳掻きを続けるような人では治癒が長引くことがあります。
そればかりか、外耳道は閉鎖した空間でいつまでも耳漏でべたべたしているわけですから、ここに湿疹が でき慢性の外耳道湿疹になってしまうケースもあります。
慢性の湿疹で分泌物が多いわけですから、そこには真菌即ちカビがついて更に分泌物を増加させます。カビがつ いた場合には厄介で非常に強い痒みを訴えますので、更に手が耳へいってしまうという悪循環を繰り返してしまうのです。

更に深刻なのは、耳掃除をしている時に誤って鼓膜を突いてしまった場合で、外傷性の鼓膜穿孔を引き起こします。
このような事故が起こるには様々な原因がありますが、耳掻きをしている時に子供さんがぶつかったとか、自分が歩きながら耳掻きをしていてたとかどれも少し注意をしていれば防げる場合が多いような気がします。 少なくとも近くに子供さんがいる時には耳掻きはしないほうが良いでしょう。

鼓膜に穿孔ができるとまずその瞬間に激痛を覚えます。そして、その直後より難聴、耳鳴り、耳閉感などの耳症状と出血や耳漏が起こります。このような症状が認め られた場合にはお近くの耳鼻科を受診してください。
鼓膜に穿孔ができてしまったら もう穴が塞がらないかというとそういう訳でもありません。鼓膜の内側に重要な組織が無く、しかも鼓膜の穿孔の大きさが全体の1/2から1/3程度であれば、特別な操作 をしなくても体の治癒力で自然に閉鎖してゆくことも少なくありません。ただし、創面に感染が起こらないことが絶対条件ですので、完全に治癒するまでは水などが入ら ないように注意する必要があります。穿孔が自然に閉鎖しなくても鼓膜パッチ法や鼓膜穿孔閉鎖術、鼓膜形成術などの簡単な手術で後遺症もなく閉鎖できる場合がほとん どです。

一方、同じ外傷性鼓膜穿孔でもその打ち所が悪い場合、即ち突いた先に耳小骨など の重要な組織が存在した場合にはかなりのダメージをこうむることとなります。
耳小骨はツチ骨、キヌタ骨、アブミ骨という3つの小さな骨の連鎖で音を伝える役目をしており、この連鎖が離断してしまうと難聴が起こります。また、アブミ骨は内耳に溜まったリンパの液をフタするように存在していますので、アブミ骨がずれるとリンパ液が漏れてしまいます。
そうすると非常に強い回転性のめまいが起こり、平衡感覚も 障害されてしまいます。このような状態になると10日から2週間の絶対安静が必要になります。その後もめまいが治まらないような場合には耳小骨手術というかなり難し い手術が必要となります。

 ■急性化膿性中耳炎

風邪は一般的にはウイルス感染による風邪症候群を指して言いますが、1〜2月頃から始まるインフルエンザなども含めて急性上気道炎、急性咽頭炎などを総称して呼ば れることが多いようです。
症状としては咳、鼻水、発熱、咽頭痛、頭痛、関節痛など が代表的です。特に子供さんにおいて、これらの症状に加え耳痛、不機嫌、夜鳴き、耳触りなどの症状が加わると急性中耳炎が疑われます。
では大人に比べどうして子供さんに急性中耳炎が多いのかというと、子供さんでは耳と上咽頭をつなぐ耳管が太く短く水平位にあるためと考えられています。それにくわえて大人よりも免疫力が弱く、またアデノイドなどが感染源となりやすいせいもあり 咽頭に炎症を起こしやすいからなのです。よく、一度中耳炎にかかるとクセになるなどという人がみえますが、今言ったような理由で中耳炎になりやすい人は、体の構造上の問題や免疫力の問題で反復するのであって、クセになるというのは少し意味が違うのではないかと思います。

中耳炎を起こす細菌は、黄色ブドウ球菌、インフルエンザ菌、肺炎球菌などが多 く、原因となる細菌の種類によっては耳だれが長く続くような場合もあります。最近 では不適切な抗生物質の投与などにより多剤耐性菌などという、色んな薬に抵抗を持ち、薬が効きにくい細菌も増加しており問題となっております。

それでは急性中耳炎にかかってしまったらどのような治療をするかというと、まず 第一に上気道炎や風邪の治療が優先されます。鼓膜の発赤・腫脹が強い場合や、高熱が持続しそれが中耳炎によると考えられた時に鼓膜切開術が行われます。
鼓膜切開は 鼓膜の一部を切開し、中耳に貯留した膿を排出し減圧する方法です。つまり中に溜 まっているものをできるだけ少なくし、耳内の洗浄や消毒、抗生物質の点耳を行い治療しようという考えです。また、排出された膿から細菌の培養検査を行い、起炎菌を調べたり抗生物質に対する感受性を調べたりするのです。

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