いろはうた
色は匂えど 散りぬるを
我が世誰ぞ 常ならん
有為の奥山 今日越えて
浅き夢見じ 酔いもせず
因縁生起
実にものみなは 因により
すがた形を あらわせど
また縁により 滅ぶとは
これ永遠の 真理なり
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1969年7月 薬師沢山荘付近にて
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無常一
川の流れは 変わらねど
流れはもとの 水ならず
淀みに浮かぶ 水泡も
久しくとどまる ことぞ無き
無常二
山も形は 変わるなり
海も姿を 改めん
世にあるものの ことごとく
移り変わるは 定めなり
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1976年 912豪雨
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誕生
われら生きとし 生くるもの
父母を縁に 世の生れる
尊き生命 なればこそ
健かなれと 願いつつ
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1978年 お宮参り
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慈育
父はその子を 慈しみ
母はその子を 育めり
父母の慈愛を 身に受けて
生まれ育ちし この命
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1981年4月 安らぎのひと時
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おかげの中に
数かぎり無き 人々と
数かぎり無き ものみなの
おかげの中に 我等また
この世の生命 歩むなり
人生の春
春の日射しは うらうらと
花咲き鳥は 舞い歌い
若き人びと みな共に
短き夢に たわむれき
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1977年1月 門出
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人生の夏
人の世の夏 めぐり来て
東に奔り 西を訪い
業にはげみて 日も夜も
分たぬ姿 束の間に
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人生の秋
秋の野山の 美しく
水の流れは 清けれど
怨憎会苦は 盛りにて
愛別離苦も また繁し
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1968年10月 上高地にて
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人生の冬
冬の訪れ 淋しきや
吹く風寒く 身にしめり
木の葉も枯れて 散り敷けり
雪霜白し 野辺の道
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1971年1月 白川郷にて
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人生の山坂
長き旅路の 常なれど
苦あり楽あり よろこびも
悲しみも有り 涙あり
山あり谷も 数知れず
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花と雲
人を愛して 喜こびの
花の盛りも おとないぬ
子らの手をとり 白雲の
行方を追いて 童歌
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老病
されど秘かに 忍び寄る
老いと病は 避け難く
思い乱るる 夕まぐれ
まどろめぬ夜も 幾十度
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生命の終わり
老いも若きも 幼きも
逃れ難きは 無常なり
この世に 生れいでしより
生命の終定 定まれり
死
悲しき哉や ここにまた
ひとつの生命 燃え尽きぬ
花のかおばせ 今いずこ
呼びても応え 遂に無し
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1971年10月 白川村加須良地区の廃屋
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