山口穂高 (感性工学博士)
【人生の1/3は座っている】
椅子は18世紀ごろから西洋を中心に日常生活の中で使われ始めました。日本では明治時代から学校を中心に普及し、今日では、椅子は生活家具の必需品となっています。
椅子に座るという生活様式が当たり前になった現在、寝ているときと立っているとき以外は座っていると考えると人生の1/3以上は座って過ごすことになります。
一生付き合える良い椅子を見つけることは良い人生のためのパートナーを見つけることになります。
【座るを愉しむための椅子】
デスクワークや乗り物移動のような場面では長い時間座る必要があり、肩こり・腰痛・むくみなどの不快感が生じることがあります。これは、これらの椅子が多くの人に合わせた設計で心地よさよりも価格や機能性を求めて作られているからです。
私たちの工房が考える椅子とは生活の中で座ることを愉しめる椅子です。日常の疲れも忘れてしまうような座り心地の良い椅子を皆様の体格や生活様式、そして想いに合わせて提案していきたいと考えています。
【体格と用途に合わせた椅子】
姿勢を保持する椅子
椅子の基本的な役割は姿勢を保持することです。そのために、椅子を選ぶ際には体格と用途にあったサイズを選ぶことが大切です。
身長から簡単に基本のサイズを求めることができます。机を使用する際は机との関係も大切です。
座面の高さ = 身長 × 1/4
机の高さ = 座面の高さ + 身長 × 1/6
そして一度座って感じることが一番大切です。
用途に合わせた椅子
用途は休息用・軽作業用・作業用があります。
休息 | 座面は低めで背もたれを寝かせます。奥行きも長めにし足置きの設置もおすすめです。 |
軽作業 | 背もたれは腰を支えるような位置にします。肘置きをつけることで上半身を楽にし立ち上がりも簡単になります。 |
作業 | 机との高さの兼ね合いを考えます。座っている時間が短いときには座面をやや高めにした方が腰が楽です。 |
【木の良さと物語】
木の表情を感じる
木の椅子の良いところはぬくもりがあるところです。木材は他の素材よりも気孔が多いため、熱を蓄えやすく、さらにしなやかな素材で人の手になじみます。
また、木材それぞれの木目が同じ木から採れた材であっても切り口によって全く違った個性を与えます。
世界で一つだけの表情をじっくりと選んでください。
完成までの物語
どこで採れたどんな木か、なぜ椅子になったのか、完成までにどのくらいの時間が経っているのか・・・
一つの椅子が完成するまでにはそれぞれが違った多くの物語が詰まっています。ぜひその物語を感じながら座ってみてください。