田舎暮らしの第一歩

                                          山口 要      


 「自然の中を歩きませんか?」 今から20数年前、新入生獲得合戦の中、ワンダーフォーゲル部の勧誘を受けました。登山部と違うのは、岩山、冬山はやらず、夏山縦走が主な活動ということでした。キスリングにテント、食料、衣類、必要最小限の生活用品を詰め込み、自然の中へ飛び込んでいく活動の中で、時には人間の無力さを思いしらされ、また時には自信を与えられることもありました。 
 今の生活の原点はこのサークルで育てられたのだと思います。

 卒業後、就職し、2年後にワンゲルの後輩であった妻と結婚、出向地の岡山で、登山、海水浴、釣り、スキー等、アウトドアの遊びを満喫しました。

 そんなふうに2年ほど過ごし、週末だけのアウトドアライフが物足らなくなった頃、「田舎暮らしを楽しむ本」に出会いました。この本を読んでいるうちに、田舎で暮らしたい、物造りを生業として、野菜を作ったり、できれば家も自分達の手で建てたい、自然の中で人間の知恵と力を精一杯使う生活をしたい、夢はどんどん広がっていくばかりでした。

 そして、ついに会社を辞め、田舎暮らしの生活力をつけるため、滋賀技能開発センター木工科に入学しました。休日には、「カントリーライフの空き家情報」を手に、京都、奈良、長野、岐阜とキャンプしながら移住地を探してまわりました。国道沿いを走っていてもだめなので脇道に入ってみようということで、長野からの帰り道、等高線の間隔が広かった下呂町大鹿野地区に入ってみました。目の前に広がる牧草地と山間の地区にしては広い空に、ここに住みたいと強く思いました。幸い、藪の中に廃屋のような別荘を見つけ、そこを借りることができ、田舎暮らしの一歩を踏み出すことができました。

                                              2002年