「ミッドナイト・ブルー」

ナンシー・A・コリンズ著ハヤカワFT文庫
680円 ISBN4-15-020229-X
 ”ハヤカワFTらしからぬ表紙”というのが手にとっての第一印象。隣のSFを手に取ってしまったかなと思わせるほどです。「フェアリーテイル」の解説で「今後、ダークファンタジー、ホラー系の翻訳が増える」と書いてあったけど、どうもこれがその第一段のようですね。解説は(私はあとがきを先に読む癖がある)アメコミ研究家の堺三保さん。作者はコミックの原作者もつとめているらしい。ということである程度心の準備(先入観ともいう)が出来上がったところで、読んでみました。  舞台は現代社会のアメリカ、ヨーロッパ。主人公のソーニャ・ブルーは吸血鬼である。黒のスリムジーンズにTシャツ、革ジャン、ミラーグラスの少女である。彼女は自分を吸血鬼にした(吸血鬼にかまれるとその唾液によってかまれた人間も吸血鬼になる)モーガンなる男を求めて復讐の旅を続ける。  吸血鬼、屍食鬼といった化け物は普段は人間を装って、人間社会の中に溶け込んでいる。彼らは浮浪者や麻薬中毒者、子供を巧みにおびき寄せ食料としているのだ。なんか漫画の「寄生獣」みたいだが、寄生獣がある日突然宇宙からやってきた脅威であるのに対し、この作品の化物たちは「昔からいた」というスタンスを取ってます。この辺の設定が結構かっちりと説明されていて何やらファンタジーというよりSFを読んでいるような気分でした。擬似科学的合理主義ですね。  ここまでの設定は取り立てて珍しくもありません。舞台設定のオリジナリティでは「ルーフワールド」の方が上でしょう。この作品の魅力は、その世界観の冷徹さにあります。つまりは「人間っていいなあ」というような安直な結論を拒否し、また、主人公がヒステリックに人間社会を断罪するというようなこともしない、(というよりも、そんなことをするとすぐに意地悪なツッコミが入る)というところにあります。たまにありますね異種族と人間が登場する作品で、結局、一方的に人間ってすばらしいというような結論にたどり着く作品が。それらの作品では、結局は作者の想像力の乏しさから異種族たちならではの人間とは違った魅力を描ききれていない場合が往々にしてあると思います。この作品、人間も化物も過剰なほどに邪悪ですが、それでも読んでてストレスが溜まらないのは冷静さあればこそでしょう。 この作品で異種族の魅力が書き尽くされているか、といえば、そこまでは言えませんけど。  続きが出るようなので、今から楽しみです。この人が原作をやってるコミックというのも読んでみたくなりました。 おまけ 日本も少しだけ登場します。やっぱりなんか勘違いしてる。欧米人ってどうして枯山水がそんなに好きなんだろう?デパートの描写とかは、まあ取材の跡が見られますが。神社に枯山水の庭はないでしょう



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last modified : 2009-11-07 13:12:02 (c)KATO Takashi,all rights reserved
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