(その一)
イエスが亡くなった直後、弟子たちは悲しみ、大いに泣いた。そこへ、マグダラのマリアが一人、立って、彼らを励(はげ)ました。「泣かないでください、イエスの恵みがあなたがたと共にあり、護(まも)ってくださいます。それよりも彼の偉大さをたたえるべきです《それを聞いて使徒ペテロは言った。「イエス様が他の者よりもあなたを愛したことを私たちは知っている。あなたしか知らないイエスの言葉を私たちに教えてください《そこで、マリアは語った。生前のイエスではなく、霊としてのイエスと語っているような言い方で。「私は一つの幻のうちに主を見ました《そして、幻のイエスが語った内容は、魂が「無明《「欲望《「無知《「妬(ねた)み《「肉欲《「愚かさ《「怒り《などの様々な敵を次々と打ち破って、上の霊界へとあがっていく様子であった。マリアがそれらを話し終わったあと、使徒ペテロと、使徒アンドレアス(アンデレ)が、猛然と怒り出した。彼らは言った。「救い主がそんなことを言ったとは信じない《「今のは、イエス様の教えではないぞ《「大体、本当にイエス様がわれわれに隠れて一人の女性と話したりしたっていうのか?《「だとしたら、私たちは彼女を後継者としなくちゃいけないじゃないか《「イエス様が彼女を我々以上に選んだというのか? そんなはずはない!《それらの非難に、マリアは泣きながら言い返した。「なんですって? では、私が嘘をついているというのですか《すると、レビ(マタイ)という弟子がペテロに言い返した。「ペテロよ、いつもあなたは怒る人だ。イエス様が彼女をふさわしいものとしたなら、彼女を拒否するあなたは何者だ《「確かにイエス様は彼女を実際上、妻としていたではないか《「わたしたちは、今こそ自らを恥じ、イエス様の教えを守って、自分を完成させ、福音を述べようではないか《こうして彼ら弟子たちは伝道に出たという。
(参考)
①マグダラのマリア・・・マグダラのマリアは、新約聖書の「四福音書(マタイ、マルコ、ルカ、ヨハネ)《等に登場するイエスに従った女性。マグダラという地方で商売をしていた娼婦だという説もある。カトリック教会、東方教会などではいずれも聖人であり、その記念日は7月22日。
②トマス書をはじめ、グノーシス派の文書ではマグダラのマリアが実質的なイエスの妻だという説がある。これらは1945年12月、エジプトの南部のナグ・ハマディ付近で農夫が発見したパピルスに記されていた福音書の内容のあらすじである。
(その二)(ヨハネ福音書より)
マグダラのマリアはイエスを心から敬愛する者となり、エルサレムにまでついて行き、イエスが十字架にかけられたときには遠くから息をひそめてそれを眺め、その葬(ほうむ)りの場も目撃した。そして、安息日が終わり、日曜日の早朝、彼女は一人でイエスの墓に行き復活したイエスに会った。マリアが泣きながら身をかがめて墓の中を見ると、イエスの遺体の置いてあった所に、白い衣を着た二人の天使が見えた。一人は頭の方に、もう一人は足の方に座っていた。天使たちが、「婦人よ、なぜ泣いているのか《と言うと、マリアは言った。「わたしの主が取り去られました。どこに置かれているのか、わたしには分かりません《こう言いながら後(うし)ろを振り向くと、イエスの立っているのが見えた。しかし、マリアには、それがイエスだとは分からなかった。イエスは言った。「婦人よ、なぜ泣いているのか。だれを捜しているのか《マリアは、園丁だと思って言った。「あなたがあの方を運び去ったのでしたら、どこに置いたのか教えてください。わたしが、あの方を引き取ります《イエスが、「マリア《と言われると、彼女は、ヘブライ語で、「ラボニ《と言った。「先生《という意味である。イエスは言った。「わたしにすがりつくのはよしなさい。まだ父のもとへ上(あが)っていないのだから。わたしの兄弟たちのところへ行って、こう言いなさい。「わたしの父であり、あなたがたの父である方、また、わたしの神であり、あなたがたの神である方のところへわたしは上(あが)る《と。
(参考)
「マグダラのマリア《(カルロ・クリヴェッリ)の絵はこちらへ
「マグダラのマリア《(ホセ・デ・リベーラ)の絵はこちらへ
「マグダラのマリア《(コジモ)の絵はこちらへ
「マグダラのマリア《(ルイーニ)の絵はこちらへ
「マグダラのマリア《(アルバート·エーデルフェルト)の絵はこちらへ
「マグダラのマリア《(グイド・レーニ)の絵はこちらへ
いろいろな「悔悛するマグダラのマリア(イエスの遺体に塗るために香油を持って墓を訪れた。又はイエスの骸骨)《の絵はこちらへ
(1) (グイド・レーニ)***(2) (エル・グレコ) ***(3) (ティントレット)***(4) (ヴェロネーゼ)***(5) (カラヴァッジオ)***(6) ティツィアーノ・ヴェチェッリオ***(7) (ホセ・デ・リベーラ)