文責:花園大学少林寺拳法部監督 大森久雄

≪イラク戦争について 2≫

【米英軍の武器弾薬や兵士を輸送することが人道復興支援活動?】


 「戦争にいくのではない。人道復興支援に行く」のだと、自衛隊の海外派兵をしてしまった小泉首相。自衛隊をイラクに送り出して、その任務が、陸自は、給水活動、学校・道路の復旧、医療活動。空自は、救援物資の搬送と挙げられる。が、ほとんどの報道が、サマワでの陸自の活動を報道していた。一番最近の報道は、「1ヶ月ぶりの給水活動再開」であった。国内で人質事件に絡んで「自己責任」バッシングが展開されている中、現地では自衛隊に犠牲者が出ないように、と要塞の中でじっとしていたのである。
 人道主義に駆られ、身の危険を挺してイラク入りして、NGOやジャーナリスト活動を展開しようとした人間を、一部言論人とメディアは批判した。「人質叩き」という可笑しな世論を、政府主導で現出したのである。 
 人質犯達は、実に、自衛隊の動きをよく知っている。米軍兵士を空輸したことも把握している、と犯人達の要求メッセージに、コメントをしているテレビ番組出演者があった。
 米英軍の武器弾薬や兵士の輸送、という事態に直面したらどうなるのか、という危惧の念は、派兵前にはY新聞にすらあった。が、今は、全く報道されない。
 「治安維持活動にあたる米英軍などへの後方支援」は、なるほど、イラク特措法の中にはある。が具体的に、米英軍の武器弾薬や兵士の輸送が含まれる、という状況を立法前に、国民は理解していたであろうか。政府の説明はあったであろうか?そもそも特措法では、「自衛隊の活動地域は、戦闘が行われておらず、活動期間中も戦闘が行われないと認められる『非戦闘地域』」となっていた。
 サマワは「非戦闘地域」なのであろうか?空自は、米軍兵士をどこからどこへ送っていたのであろうか?サマワにばかり焦点があたっているが、米軍の後方支援活動を行う事が、今回、自衛隊派兵の最大の眼目ではないだろうか。政府は「人道復興支援」を声高に、マスコミも必ずこの言葉を修飾語としてイラクの自衛隊活動の前に冠して報道している。が「後方支援活動の実態」には、報道管制があるようである。
 自衛隊派兵の前に、何度となく、現地調査(隊)が行われていた。その中で、サマワは、劣化ウラン弾による放射能汚染の危険地帯ではない、となっていた。が、実際に派遣された時の装備は、コンパクトな放射能探知機携帯、となっている。オランダ軍が劣化ウラン弾を発見し、米軍の使用が明らかになった。
 派兵前から、民放などが現地取材して、イラクの人々が求めているのは、安定した電力の確保を筆頭に「インフラ整備」と「雇用」であった。自衛隊ではなく、「企業」の進出を期待していた。また、給水活動は、他国のNGOが展開している場合は、イラク人を雇用して行い、給水能力は10倍、経費も正比例して格段に安上がりに出来るという報道だった。自衛隊の派遣費用だけで300億近くの予算を組みながら、やることは対処療法ばかり。問題の根本解決には向かっていないのである。
 イラクの要請を受けて、真に効果的な人道復興を行おうと、国を挙げて取り組もうと思えば、決して自衛隊の派遣を、とはならなかったはずである。イラク国民の要請を受け、自立していくのに支援していく、というありかたが望まれると思うのだが、こちらの『人道復興支援』の押し売りでは、決して両国の為にはならない。友好国・日本が、小泉がいち早く米国のイラク攻撃を支持してから、敵対国になってしまった。
 スペインはイラク撤退を始めた。オランダ、ポーランド、ホンジュラスなどが撤退を表明したり、検討を開始していると聞く。アメリカ、イタリア、オーストラリアも次期政権の候補者は、イラク撤兵を公約にして選挙戦を迎える。「テロに屈しない」というのではなく、これ以上、不正義なアメリカ占領政策の荷担は止めて、自衛隊を撤収すべき時、と考えます。  合掌   2004.5.5

※今回は、まとめるに際して参照したWeb先、及び原文をいちいち挙げませんでした。現地にフリーのジャーナリストがわずかに残っている、と耳にします。大本営発表のみではなく、我々へのニュース配信先が多様なことを期待しています。


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