1.属性

(1)ニーズ
独立開業に関する本によく次のことが書いてあります。
「あなたが事業として行うことをお客さまは必要としているのか。もし誰かと同じことをするなら、あなたはその会社で働けばいいじゃないか」
要するに「他社と違って、ウチは○○をします」というものがあり、「それをどこかのお客さまはきっと必要としているはず」といったものがあるか、ということが重要です。もし、誰かと同じことをやる場合、価格やマーケティング力や知名度などの影響が大きいため、どうしても後発組は市場に参入できないので、やめたほうがいいといった意味です。
上記の「どこかのお客さまはきっと必要としているはず」という部分は、事業を進めていく上で非常に重要な部分です。この「はず」は、ともすると自分勝手な妄想かもしれませんが、この世の中で売れているものは、すべてこの「はず」という仮定を前提として適切なマーケティングを行い、売れたわけです。「はず」というのが妄想か現実かを市場で確かめることがいわば事業を行うことの本質とも言えるわけです。また、「適切なマーケティング」という部分ですが、「いいものを準備してもそれを必要な人にどうやって伝えるか」ということも非常に重要です。マーケティングについては、あとで詳しく述べます。
ニーズの有無については、「はず」という自分なりの考えをしっかり持ち、そこに焦点を定め、自分のできることを全力投球することになります。
(2)環境
独立開業をしようとした場合、その人の置かれている環境というのは、人それぞれ千差万別です。したがって、営業方針や事業の進め方そのものも人によって異なります。まず、ここのところをしっかり認識しておく必要があります。
例えば、会社員で独立しようとしている人が2人いたとします。同じ会社に勤務し、年齢も同じ、性格も同じ。でも、1人は独身、1人は妻や子供がいる。この場合、独身の方は比較的斬新な営業方法がとれますが、妻子のある方はできるだけ堅実な方法を選ぶ必要があります。
このほかにも、年齢、自己資金、介護が必要な家族がいる場合など属性の違いは無数にあります。事業を営む場合、この属性の影響をかなり大きく受け、自分がこうしたいと思ってもできないケースなどあります。
また、自分の親や親族がその開業に非常にプラスになる要素を持っている場合、開業当初は非常に有利であり、順調にスタートができます。一方、何もなく、すべて自分の積み上げしかない人だって多くいます。私もその一人です。
アメリカの実業家であるウォーリー・エイモスは次の言葉を残しています。
「今いる場所から始めるしかないんだよ」
開業時の状況は全員違います。恵まれた人を恨めしく思ったときは、今の言葉を思い出し、今いる場所から一つずつ地道に進めていきましょう。それ「しか」ないんですから。
ところで、本屋さんに並んでいる独立開業に関するものは、当然ですが、成功した人の本ばかりです。失敗した人で、このようにして失敗しました、という本はありません。すなわち、あなたがその成功した人とまったく同じやり方をしても、そもそもスタートの環境が違うため、同じ結果が出る可能性は極めて低いことをまず認識してください。
もし、あなたが本屋さんで「こうすれば絶対成功できる」という本を買うなら、作者が別々のものを最低3冊は読んでください。内容がまったく違うことに気付きます。私も気付きました。たとえば、
①「とにかく幅広く積極的に」という作者の本を読むと、「そうだ、後発組は積極的にいかないとだめだ。いろんなマーケティングをしなきゃ」という気になります。
一方、違う作者が
②「地道に顧客満足を積み重ねていくことが、事業を継続していくコツ」という内容の本を読むと、「そうだ、やみくもに営業ばかりするのでなく、1件1件のお客さまを大事にするため、しっかりと実務を身に着けよう」という気になります。
また、違う作者が
③「異業種交流会やセミナーに参加して人脈を増やすことが大事」という本を読むと、「そうだ人脈を早く作らないと始まらない」という気になります。
「いったい、自分はどの路線で行くべきなのか」と思ったり、「①②③の全部を同時進行しなければいけないのか」と思ったりします。私もそう思いました。
しかし、しだいにわかってくるのですが、それぞれに弊害もあるのです。
①の場合、HPやチラシ等の宣伝が主体になり、お金がたくさんかかります。自己資金しだいです。
②の場合、実は机上で10の量を勉強するより、1つの仕事をうけてからそのための勉強を真剣にやったほうがすごく身につくものです。机上の勉強は自己満足だけで結局実務では使えないことが多いです。これは会社員の方なら身に覚えがあるでしょう。集合研修に行って何度も教えてもらうより、現場でお客さんを前にビクビクしながら仕事するほうがあっという間に身についたことを。
③の場合、実は名刺交換を100人としたって、仕事は来ません。それより、そのうち、気の合いそうな3人くらいの人と誠意を持ってしっかり意見交換したほうが仕事は入ってきます。ですので、少しの会話の中で「相性の合いそうな人がいないかな」という目線で数人見つけ、あとからその人としっかり話し込めば十分です。「仕事をくれそうかな」なんていう目線で人を探してもまず無理です。
では、①②③について、自分はどの路線で行けばいいかですが、「できるだけ自分の心に正直な方法をとる」ということです。たとえば、HPなどIT関係が好きな人もいれば、インパクトのあるチラシなどを作ることが好きな人、理論的な勉強をするのが好きな人、たくさんの人と話すのが好きな人、というように人によって好きなものが異なります。反対に、好きでないことをしても、仮にその方法で成功した人がいくらたくさんいても、うまくいくはずがないのです。まずは、自分に合う方法から地道に行ってみることが重要です。
(3)年齢
開業後、なんとか生活資金を稼げるレベルになったと仮定します。さて、ここであなたが何歳になっているかは重要なことです。30歳や40歳ならば、現状の業務と並行して他業態に進出するとか、近隣の大都市に事務所を移転したり、または全国展開したりと夢は大きく膨らみます。また、人を多く雇って事業をどんどん拡大していくことも可能でしょう。しかし、その時点で50歳、60歳となると大都市や全国展開する夢を持つこともいいのですが、そのあとどうするのかを明確にしておく必要があります。すなわち、事業というのは、いずれ廃業するか後継者に渡すかの2つに1つです。思いっきり手を広げたあとに自分が病気になって、何も策を打っていなかったら、お客さまは困るし、従業員は困るし、家族は困るという事態になり、果たしてこれでよかったと言えるのか疑問です。それならば、いっそのこと、50歳、60歳の人はあまり事業規模を大きくしないか、自分に何かあったときのことを考え、若い同業者と業務提携することも考えておく必要があるでしょう。いずれにしろ、年齢によってできることは間違いなく限られているので、開業する際は、自分の年齢にあった営業方法を行うことが無駄を省くコツになります。

以上が「属性」についてです。
ここで重要なことですが、運動会と違ってスタート地点は全員違います。したがって、人と比べてもまったく意味がありません。なぜ比べても意味がないかというと、人と比較する場合、見えるものでしか比較していないからです。でも人生の大半は見えないものに支配されています。「運」と「時間」でしょうか。大成功とは、ただの通過点です。そのあとに大失敗が起きない保証はどこにもありません。
とにかく、精一杯努力したら、あとは神様に任せましょう。神様を信じない人はご先祖様を信じましょう。ご先祖様なら、必ずあなたを守ってくれるはずです。