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ストレスと免疫力 平成22年7月のテーマ
今回は、免疫についてとても参考になる海沼英祐先生のコラムを
東洋医学研究所®のホームページから紹介させて頂きます。
東洋医学研究所®グループ
海沼鍼灸院 院長  海沼 英祐
○はじめに
 ストレスが多いと、病気になりやすいとはよく聞く話しです。「寝不足が続いたから風邪をひいた。」とか「心配事があって悩んでばかりいたら、肩こりや頭痛がするようになった。」など、ストレスは体調に大きく関係します。しかし、なぜストレスが体調に関係してくるのでしょうか?今回は、このストレスが我々の免疫システムにどのような影響を与えているのかを少しお話しさせていただきます。

○免疫システムについて
 最初に少し免疫システムについてお話します。平成19年2月のコラムで説明させていただきましたが、免疫システムの主役になるのは免疫細胞である白血球です。白血球は、体を異物から守るために全身の血液を巡ります。この白血球にも役割分担のために、主にリンパ球顆粒球マクロファージの三種の免疫細胞が存在します。割合はリンパ球が35%、顆粒球が60%、マクロファージが5%ですが、この割合は一定ではなく変動します。
 リンパ球は、抗原抗体反応(一般的に抵抗力というもの)によって抗体をつくり、病原体の抗原をやっつける働きをします。リンパ球は、副交感神経が活発になると割合が増えます。
 顆粒球は、体内に細菌などの異物が入り込むといきなり食べる貪食能をもっています。異物を食べた顆粒球は、すぐに死んでしまいます。その死骸が傷口にでる膿です。また顆粒球が死ぬと活性酸素という毒をまきちらします。顆粒球は、交感神経が活発になると、その割合が増えます。
 マクロファージは、リンパ球と顆粒球の司令塔のような役目をはたしている細胞です。

○ストレスってなに?
 ストレスは日常で頻繁に使われる言葉です。医学辞典などでみてみると、今日では「生体に有害な影響を及ぼす要因」は、すべてストレスと総称されています。つまり心と体にとってプラスでないこと、喜ばしくないことです。例えば無理をしすぎたり、疲れがたまったままだったり、寝不足が続いていたり、悩み心配事を長く抱えていたり、ときには強いプレッシャーのなかで我慢を強いられていたり。このようなことがしばらく続くか、あまりにもその程度が強く自分の許容範囲を超えたときに、それがその人のストレスになります。

○ストレスを受けるとどうなるのか?
 ストレスを受けると、真っ先に反応するのが自律神経です。自律神経は、神経系の末梢神経の一種で、体にある60兆もの細胞の働きを調整するために全身に分布する、自分の意思では決してコントロールできないタイプの神経です。今このときも自分の心臓が鼓動し続けるのも、数時間前に食べた食事の消化や吸収を続けるのも、運動をすると自然に汗ばんでくるのも、すべてこの自律神経の働きによるものです。この自律神経は、活動するときに働いて興奮の体調をつくる交感神経と、休むときに働いてリラックスの体調をつくる副交感神経の二種類の神経からなっています。この自律神経は、消化吸収体温調節排泄生殖といった日常的な行為を行うために必要な諸々の機能を、交感神経・副交感神経のバランスを保ちながら、しかも就寝中でさえも片時も休まずコントロールし続けています。
 疲労が蓄積したりして生体がストレスを受けると、消化や呼吸・体温調節といった自律神経が関わるさまざまな全身障害、つまり体調不良が次々と誘発されます。不眠が続いたり、睡眠をとっても疲れが抜けない、肩こりがひどかったり頭痛がする、体が重く感じるなどの体調不良は自律神経のバランスが崩れたために起こる症状なのです。

○ストレスが免疫システムに与える影響は?
 先に話したように、ストレスを受けると最初に自律神経が反応します。自律神経のバランスが、交感神経が優位な状態に大きく傾きます。この状態が交感神経の緊張であり、交感神経の緊張が続くと精神的にはイライラしやすくなり、肉体的には動悸がして、血圧の上昇食欲の低下などが現れます。交感神経の緊張がさらに長期にわたると、免疫システムにも影響がおきます。免疫細胞である白血球の中で顆粒球の割合が増加し、リンパ球の割合が減少します。その結果、顆粒球の貪食能によって粘膜や組織に炎症性の障害を起こしやすくなり、体調不良から病気を発症しやすくなります。こうしてストレスが多いと病気になりやすい状態になるわけです。

○おわりに
 今回は、ストレス免疫システムについて、お話しさせていただきました。
ストレスが一切なく、つらいことや悩みのない毎日を送れば健康を保てそうですが、そうはいきません。どのように生きても、ストレスを完全に排除することはできません。しかし、バランスの崩れた自律神経を正常な状態に戻そうとする方法はいくつかあります。鍼灸治療は、その代表的な治療のひとつです。
 東洋医学研究所®グループでは、黒野保三先生が長年にわたり研究された自律神経に働きかけて身体を健康な状態に戻す鍼治療を行っています。ぜひ東洋医学研究所®グループ鍼治療を活用していただいて、より健康的な日常を送っていただきたいものです。

参考文献:
・東洋医学研究所® 研究室「未病治に対する鍼治療」より
鍼刺激の人体免疫系に及ぼす影響(その1) 黒野保三 他
針刺激の生体免疫系に及ぼす影響(その2) 黒野保三 他
針刺激のヒト免疫反応系に与える影響(Ⅲ) 黒野保三 他
鍼刺激のヒト免疫反応系に与える影響(Ⅳ) 黒野保三 他
鍼刺激のヒト免疫反応系に与える影響(Ⅴ) 黒野保三 他
鍼刺激のヒト免疫反応系に与える影響(Ⅵ)
                   β-endorphinと細胞性免疫系能の検討  黒野保三 他
・未来免疫学 安保徹 (インターメディカル)
・病気にならない人の免疫の新常識 安保徹 (永岡書店)
・免疫学の威力 安保徹 (悠飛社)

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