岐阜県 岐阜市 鍼灸院 鍼 はり 経穴 ツボ つぼ 治療 東洋医学 経絡 迎香 尺沢 天突 風門
経穴(けいけつ)について その2
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東洋医学研究所グループ  井島鍼灸院院長 井島晴彦
経穴(けいけつ)の名前には重要な意味があります。
 東洋医学的な治療に経穴は切っても切れないものです。私は黒野保三先生のご指導のもと、経穴について文献から調べさせて頂いています。
 そもそも経穴の始まりは、身体の調子の悪いときに、身体のある部分を刺激すると楽になるという経験が広まってできたと考えられます。現代のように医療が進んでいませんでしたので、病気を治したいというこのような試みはより真剣なものだったことが想像できます。身体のいろいろな場所にそういう部分があることがわかると、それらを区別するために、位置や効果などさまざまな理由から名前がつけられたと思われます。その名前が後々も一般に認められ伝えられるにはそれなりの説得力が必要だったと考えられます。
 そこで今回は、経穴の名前がどのような理由でつけられたかを漢字のなりたちから読み取ることにより(穴名考)、鍼灸治療の現場でも、それぞれの健康管理にもたいへん役に立ちますので、文献を参考にできるだけ実践的で興味のもてる経穴を紹介させて頂きたいと思います。
意味から名前のつけられた「迎香(げいこう)」は鼻づまりの治療に使われます。
位 置  小鼻のきわにあり、鼻唇溝中です。
穴名考 迎はむかえる、香はにおい。においを迎え入
      れる。鼻を天門といい天の気を取り入れる門
      戸、鼻孔の外方にある穴の意味です。
主治症 鼻疾患をつかさどる。上歯痛、三叉神経痛、
      顔面神経麻痺、脳貧血
      鼻づまりで呼吸が苦しいときに刺激しますと、
      鼻のとおりがよくなり楽になります。

ここで、経穴名のまめ知識です。
経穴名が最初に登場する書物は中国の「黄帝内経(こうていだいきょう)」です。
 日本経穴委員会は経穴の名前や部位などについて、1984年にWHOで決定した361穴を「標準経穴学」として発表しています。経穴の数については諸説ありますので、ここではこの361穴について話を進めさせて頂きます。
 それらが最初に登場する古典文献は中国の殷の時代に表されたと推察されます「黄帝内経」の「素問(そもん)」と「霊枢(れいすう)」で、その数は138穴です。
 さらに、3世紀後半に中国晋代の皇甫謐(こうほひつ)が著した「鍼灸甲乙経」にはじめて記載された経穴は209穴であり、この時点でほとんどの経穴が登場しています。この文献には経穴の部位も明らかにされていますので、経穴学の基礎を集大成したものとして高く評価されています。
 そして、北宋の初期に王懐隠(おうかいいん)などが編集した「太平聖恵方(たいへいせいけいほう)」に新しく5穴が登場し、現行の361穴がすべて出そろいました。

位置から名前のつけられた「尺沢(しゃくたく)」は咳止めに使われます。
位 置 肘窩横紋上にあり、上腕ニ頭筋腱の 
     小指側のくぼみです。
穴名考 尺は尸(人)と乙(曲げた肘の象形)の
     合字で、人の前腕部をさします。沢は
     水をたたえたところでくぼみをさします。
      したがって、尺沢は前腕部の長さの基
     準となる肘のくぼみにある穴の意味 
     です。
主治症 呼吸器疾患をつかさどる。特に咳。扁
     桃炎、ヒステリー、ノイローゼ、五十肩、
     正中神経痛や痙攣、書痙、などです。


もうひとつ咳止めに使われる「天突(てんとつ)」を紹介します。
位 置 胸骨の上のくぼみです。
穴名考 天は上で鎖骨より上を天の部という。突は急に出
      る。胸部より気管が、頚部に急にでてきているとこ
      ろ。胸骨柄の上部の気管の前にある穴の意味で
      す。

主治症
 咳止め・痰の症状一切に応用します。気管支炎、
      喘息、呼吸器疾患、咽頭炎、喉頭炎、扁桃炎、バ
      セドウ病、嘔吐、食道痙攣、心疾患などです。
     
効果から名前のつけられた「風門(ふうもん)」は風邪の治療に使われます。
位 置 第2 ・第3胸椎棘突起間の高さの外方
     で最長筋の通りです。
穴名考 風は風病=風邪、門は出入り口。風邪 
     の出入り口。風邪の主治穴の意味です。
主治症 風邪をつかさどる。熱病、気管支および
      肺疾患、胸膜炎、肋間神経痛、頚肩腕
      症候群、五十肩
     
経穴名の由来を知って、じょうずに役立てましょう。
 今回は、経穴名の由来を知ることで健康管理や治療の役に立つことを、風邪症状の場合を例にあげて紹介させて頂きました。
 鍼灸治療をさせて頂く場合でも、経穴名のもつ意味を正しく理解し、さらに、位置・形・深さを知り、豊富な知識に基づいて、適度な刺激を加えることは効果をあげるために非常に大切なことだと考えます。
 そこで東洋医学研究所グループの先生方は、黒野保三先生のご指導のもと学・術・道の練磨につとめております。安心して鍼治療を受けてください。
 また、次回の私のコラム担当のときは、もっと多くの経穴を紹介させて頂きたいと考えております。是非、楽しみにしてください。

 文 献 
  黒野保三鍼灸医学概論〈改定増補〉.エフエー出版1996
  黒野保三臨床鍼灸医学エフエー出版2001
  竹之内診佐夫.濱添圀弘鍼灸医学南山堂1977
  日本経穴委員会標準経穴学医歯薬出版株式会社1989